海で安全な旅行をする為に

 2022年4月23日に発生した知床観光船KAZU1の沈没事故には、近年稀に見る悲惨な事故でした。なぜゴールデンウィーク前後には悲惨なの事故が発生するのでしょうか?この事故では人災面の過失がクローズアップされますが、GWは全国的に季節の端境期となり、特に海は事故が発生する要因が非常に多いと思われます。それにしても波浪注意報発令中で時化が来る前の誰も海に出ない中、リスクということを社長や船長は真剣に考えていなかったと思わざるを得ません。事故原因はいずれ解明されると思いますが、これは明らかに人災事故です。失われた命は戻ってきません。犠牲になった方々のご冥福を祈り、行方不明の方の安否が一刻も早く分ることを祈ると同時に、乗客の立場からどのようにすればもっと安全な海の旅ができるようになるのかを考えました。

IMG_0366.JPG

 なぜなら知床は日本が誇る素晴らしい観光地だからです。一部の安全規定を遵守しない業者のお陰で観光地全体が沈んだり、善良な観光従事者が困るようにしてはならないと思います。知床のどこが他の観光地と異なるのか、どこにリスクがあるのかを、知床の素晴らしさを微力ながらお伝えしたいと思います。個人旅行での旅のサイトです。予約も可能です。

DSC01313.JPG

 私は大学を出て初めて就職した会社が、小型の船舶とエンジンを製作しており、その営業職として社会人初期を過ごしました。その関係で海難事故の実情やその手前で助かった例も見て来ました。船やエンジンの構造や波の状態、北の海や南の海、内海や外海、どれも同じところは少なく、全国各地漁船の船型が全く異なるのです。それだけ日本の沿海は各地で波や海流、風の立ち方が変わっているのです。私自身も小型船舶2級免許を持っておりますが、今になっても操船するのは怖いです。KAZU1は瀬戸内海で運行されていた高速船と報道された時は驚愕しました。外海で内海船型の船を使用するとはリスクを呼び込むようなものです。 DSC01365.JPG

 知床の海で団体のツアーを企画する時最も注意したのが落水事故です。US沿岸警備隊基準では今回KAZU1の事故時では水温が0-5度、これでは落水してから低体温症(体温が35度以下になる時間)で約15-30分以内位に意識が無くなります、そして生存できる時間は長くて30-90分です。では私がツアーを企画した9月と10月はどうでしょうか?ここの海はオホーツク海です。夏でも水温が20度に届きません、17-18度あれば良いでしょう。もし水温17度で落水したらそれでも2-7時間で意識が無くなります、生命維持は2-10時間、意識が無くなればアウトです。これがオホーツク海の様な冷たい海の怖いところです。その為に凪の日に大きな船をチャーターしたのです。

DSC01407.JPG

 もしこのゴールデンウィークの時期に落水して助かる方法があるとすればなんでしょうか?現在国土交通省ではスライダー付き救命筏やEPIRB(非常用位置表示無線標識)等の導入等を考えておりますが、乗客側に立って可能性がある方法はあるのでしょうか。ヒートテックの様な保温下着を着てその上に知床流氷ツアーに使うドライスーツを着用して、その上からライフジャケットを着ると可能性があるかもしれません。ドライスーツはホットスーツと呼ばれるもので厚みが2mm、3.5mm、4.5mmとカタログにはありました。特に極寒の海は4.5mmとなります。これはネットで見ると13-40万円位します。スマホは圏外なので使えるかどうかわかりませんがスマホを防水ケースに入れて首から掛ける。海岸では高波に打ち付けられないように泳ぐ位でしょうか。いずれにしても救助船やヘリが30分以内に見つけてくれるかどうかが鍵となります。

DSC01425.JPG

 旅行保険は必要です。今回の事故で保険会社は知床の海のツアーでの保険価格を上げて来ると思います。今回保険の相談ができるサイトを添付しますので、海のレジャーを楽しむ方は専門家にご相談をお願いします。海の事故が増えるたびに保険料がスキューバーやシュノーケル位に値上がりするのではと心配します。知床を見るにはリスクを覚悟しなければならないようになりそうです。それと同時に危機管理意識を旅行業はじめ旅行関連業種の方々は高く意識しなければならないでしょう。旅行保険を相談したい方はこちら。

IMG_0168.JPG

 2018年の9月と10月知床ツアーをやりました。ウトロ港を出て15分、後からKAZA3が高速で抜いて行きました。ウトロの観光船は大型のオーロラ号と小さな船ですが、この小さな船は速いです。しかも小型で小回りが利きます。恐らく高馬力エンジン搭載の船でしょう。沿岸には沈み磯や定置網が多く設置されており、小型高速船はその間を高速で抜けて行くのです。それ故ウトロ港-知床岬3時間などという短い時間で往復が可能となります。凪でしたら高速走行も可能でしょう。しかし時化たら高速が出せなくなります。潮が速い場所があり、時化ると潮に逆らって走らねばならないこともあります。我々は沖を通りました。岸から0.5km-2km位の間を通っていたのですが、魚探を見ると水深200mを越えた場所もありましたし大半が100m以深でした。もっと深い所もあるよと船長の言葉。知床半島が海の中でも断崖絶壁となって連なっていることが解りびっくりしました。

IMG_0222.JPG

 ウトロの港はいつも鏡のような海です。しかし出港してカムイワッカの滝辺りで波の様子が少し高くなります。そこからカシュニの滝方面にしばらく走ると熊の出没ポイントがあるのですが、その先からまた少し高くなりました。そして知床岬付近では揺れるのが解ります。合計平均波高1.0m位の波高の差はたったのではないでしょうか。これが私が経験した凪の知床でした。あまり波が高いと乗客が船酔いして観光にならない場合があります。特に鏡の様な海で吐く方もおられるのです。50cm波が高くなったら観光できない人が増えるでしょう。熊が目の前に居ても写真も撮れない状態なのです。ですので第2回目のツアーでは知床岬はやめて釣りにしました。カムイワッカ沖では皆さんに沢山カレイが釣れ、夕食が賑やかになりました。

IMG_0482.JPG

 知床に旅行ツアーを企画する人、実際行きたい人に言いたいのは、当地の海でも陸でも信頼あるガイドさんを付けることです。ガイドさんの予約ができずに私1人で環境省の管理下の知床自然センターの知床五胡を20名程引き連れて行ったのですが、事務所の最近の熊の目撃情報に目が行きます。その時は毎日出てました。昨日同じ時間にヒグマが2頭も出ていたのです。私が先頭を歩いて熊捜しをして、お客様には熊が出たらすぐに反対方向へ騒がずに速足で進むように皆さんに言いました。柵をくぐって安全地帯の木の橋に出る時までは私もお客様も冷や汗ものでした。熊はそばに居てもわからないのが怖いです。

IMG_0551.JPG

 これが世界自然遺産に指定された場所なのでしょう。怖いこともありますが、ルールを遵守して無理をしなければ日本を代表する観光地を十分楽しめると思います。これからはリスクを如何に回避して安全に美しさを楽しむことができるかを考えなければならないでしょう。旅客として当地を訪れる予定のある方は、その季節季節の特徴と何が安全なのかを当地ガイドさんや信頼ができる方に聞いて第一に安全に帰還することを心掛けてください。

IMG_0571.JPG

 では何を安全基準とするのでしょうか?船釣が趣味で昔から乗合船に乗っていた私の経験では、相当酷い海にも出ました。船が直立する様な経験は何度かあります。本当にこれは怖いですよ。天気予報では波浪注意報が出て、平均波高2.0mの外海にいるとします。ここはは間違いなく荒れた海です。釣をしても魚が釣れる確率は低いです。平均2mとは3m4m5m以上の波も来るものなのです。内海でも1.5mでも怖いですね。鏡の様な港の外を見ても船頭がやめると言えばやめます。何度も言いますが、平均波高1m未満でも慣れない方は船酔いはしますので、波浪注意報が出てないかどうか、これから荒れるかどうかも確かめて乗船ください。

IMG_0610.JPG

 この知床の自然は他の場所にはありません。ここへ来ないと見れないのです。もし夏から秋に訪問すれば、ホテル横の小川にシロザケやカラフトマスが登っていきているのが確認できます。ホテル横でカラフトマスを生で見れる所は他にあるでしょうか?写真で見るのと実際見るのでは臨場感が違います。温泉に浸かりながら北の海の幸に舌鼓を打ち、自然に溶け込むような旅行体験を誰しもしてみたいです。安全を軽視する傾向のある業者が消えた後の打撃を被った知床の観光産業の再生を応援し、国内外にその魅力を今後共に伝えて行きたく思います。

IMG_0629.JPG

 これがカラフトマスの遡上です。ウトロ漁港に流れ込む小川を遡上してます。ウトロ漁港ではシロザケ釣りの方に大きなシロザケが釣れてました。

DSC01614.JPG